2009年8月25日 13:54

サブリースとは大家から直接賃借するのではなく、その場所が不要となったテナントから残りのリース期間について場所を借り受けることです。テナントは賃借した場所の全部または一部分についてサブリースを行うことがあります。サブリースのテナントをサブテナントと言います。

 

サブリースには色々な問題があります。私共は最近サブリースの問題を二件ほど対応しました。一件は和解交渉で解決しましたが、もう一件は訴訟となりました。

 

一件目は、テナントであるお客様が廃業し、それに伴いリース契約も解除する必要が生じたので、オフィスの一部をサブリースしていたサブテナントにも立ち退きをお願いした件です。サブテナントはテナント側の都合で自分達も出て行かなければならないことに対し相当抵抗しましたが、最後には和解交渉に応じました。

 

二件目は逆に、リース期間が終わっているにもかかわらずサブテナントが立ち退かなかった件です。リース契約後の居座りに対しては違約料を払わなければなりませんが、その違約料の支払責任は一義的には居座ったサブテナントではなく転貸をしたテナントにあります。テナントである私共のお客様は話し合いで問題を解決しようと2ヶ月間交渉を続けましたが、最終的には賃貸期間後の占有継続、契約不履行、不法侵入のクレームをもってサブテナントに対する訴訟を起こしました。この件では、サブテナントは裁判官と審議を開始する前日に立ち退きに合意し、さらには大家とも交渉の結果、違約金は免除してもらうことで決着しました。しかしもし最後まで抵抗していたとすれば、法的に強制立ち退きを行うには数ヶ月がかかった可能性があります。

 

もしも貴社がオフィスの一部分を第三者にサブリースしようとお考えの場合には、リース期限に何がおこるか、もしも自分達が事業から撤退する場合何がおこるかについて考えておく必要があります。サブリースの際の契約には、この点が明記されてある必要があります。サブテナントの契約不履行があった場合に備えて、敷金や信用状(L/C)を求めることも検討されるべきでしょう。

 

投稿者:
Hiro Sugano
 | カテゴリ:  |   | コメント(0)  | トラックバック(0)
2009年7月27日 15:12

最近会社を清算したり、清算をお考えになるお客様のご相談を受ける機会が増えてきています。そこで良く聞かれる清算後の債権・債務の問題について簡単にご紹介しましょう。ニューヨーク法においては、清算後でも会社は清算前に生じていた訴訟原因に基づいて訴えたり訴えられたりすることができます。つまり会社を清算したからといって会社に求められる権利回復の権利・義務は失われないということです。清算前に会社の取締役、執行役、株主が持っていたあらゆる債権と債務は消滅しないと言い換えることもできます。例えばあなたがある会社に対して契約上の債権を持っていたとすれば、その会社が清算された後でもその会社を訴えることができます。ただ清算後の取締役、執行役、株主の行為が清算会社に新たな債務を生じさせることはありません。

清算の決定を下した後で、全ての債権者と潜在的債権者を特定する必要があります。往々にして関係者は潜在的債権者について分析を怠る傾向がありますが、これは後日問題を生じる種になります。株主に配当を行う前に、既存及び潜在的債務に対して十分な引当金を積む必要があります。潜在的債権者とはコンタクトを取って問題を早急に解決することを検討すべきです。清算のプロセスについては明細を残しておき、清算会社の現金については別口座で管理しておくことが重要です。既存・潜在的債務に対する十分な引当がなされるまでは株主に対する配当は控えるべきです。判決による損害賠償金の支払いを清算会社から得られなかった債権者は、清算会社の残余資産を受け取ったり、残余資産を維持管理している元株主に支払いを求めることができます。子会社から何を受け取ったかについてしっかりした記録の無い会社は実際に受け取った額以上の金額を債権者から要求されるリスクがあります。


人気ブログランキングへ




投稿者:
Hiro Sugano
 | カテゴリ:  |   | コメント(0)  | トラックバック(0)
2009年5月16日 16:26
前回は調停についてお話しましたが、これはインフォーマルな代替的な論争解決手段(Alternative Dispute Resolution、以下「ADR」)の一つでした。仲裁はこれとは別の形態のADRになります。仲裁は手続き的には裁判よりも調停に近いですが、実質的には調停の結果には拘束力がある場合が多いという意味で裁判に近くなります。

一般的に仲裁は契約書類がある場合の論争解決方法として選択されますが、契約書に関連事項が定義されていなかったり、書面での契約が無い場合にも両者が合意すれば仲裁を行うことができます。今日では民間でのほぼあらゆる論争を仲裁に持ち込むことができます。これには商業的論争、雇用関係、知的財産関係、消費者問題、国際取引なども含まれます。

仲裁を行う裁判所には色々なものがあります。最も有名でよく選ばれるのが1926年に設立されたアメリカ仲裁協会(American Arbitration Association)です。両者は一名から三人までの仲裁者(neutral)を選ぶことができます。仲裁者はかつてはArbitratorとかArbitration Judgeとか呼ばれていましたが、その意味合いが誤解を生みやすいとしてNeutralという名前になったという経緯があります。関係者は事実関係と法律的な論点を仲裁者に提出し、口頭弁論のパネルに出席します。その後でパネルが判決を下します。裁判であれば何年もかかるであろう論争も数ヶ月で解決することができます。

仲裁はADRの効率的な一手段ではありますが、歴史的に仲裁と裁判との微妙な関係や仲裁の拘束力の例外等、仲裁を選ぶ前にその色々は問題点について知っておく必要があります。連邦政府とニューヨークを含む多くの州において、仲裁に関する法律がありますが、これについては次回にご説明致します。

週刊NY生活5月19日号に掲載されました: All Rights Reserved

ブログランキングにも参加しています。

人気ブログランキングへ



















投稿者:
Hiro Sugano
 | カテゴリ:  |   | コメント(0)  | トラックバック(0)
2009年4月16日 20:47

代替的な論争解決手段(Alternative Dispute Resolution)として調停という制度があります。調停とは法についての知識を持つ中立的立場の第三者が両者の論議を聞いて妥協点を引き出すものです。調停の費用は訴訟費用に比べれば極めて低く抑えられます。

論争の当事者は自分の弱点やリスクが見えず、両者が受け入れることが出来る合意点に達するための真摯な努力を怠る場合があります。時として関係者は感情的になってしまったり、和解をすれば自分の主義主張を曲げることになるという思い込みが激しい場合もあります。

調停人はこのような場合にも両者のケースの弱点やリスクを説明し、和解は敗退ではなく勝利と看做せるように導くことに長けています。裁判官と違い、調停者は証拠に関する様々な制限事項に縛られる必要はありません。調停により公判では得られない形での妥協を得る場合もあります。弁護士は調停人に提出する書類を準備し、この中で事実関係及び法的論議を展開するという重用な役割を果たします。

調停のためには論争の両者とも調停に参加する必要があります。そして調停案については一方が受け入れを拒否した場合には強制力はありません。しかし調停案が受け入れられなかったとしても、両者は自分達の立場がどのようなものであるかについての理解を高め、裁判によりどのような結果が期待できるのかについて知ることができるというメリットがあります。調停は両者の代表とその弁護士の出席の下、調停人の事務所にて行われることが一般的です。

最近では、コストの高い訴訟に替わる論争解決手段として調停を考えていらっしゃる方々も増えています。ニューヨークの裁判所では、裁判件数削減のため論争当事者達がまず調停のプロセスに参加することを求める場合もあります。

(この記事は週刊NY生活4/18号に掲載されました) All rights reserved.

(ブログランキング参加中:よろしければ下のアイコンをクリックしてください)

人気ブログランキングへ

投稿者:
Hiro Sugano
 | カテゴリ:  |   | コメント(0)  | トラックバック(0)
2009年3月20日 16:11
最近、経済状況の悪化する中で、ビジネス・パートナー間の係争が増えているようです。我々のお客様の中にも訴訟の警告を受けた方、訴えるべき問題を抱えている方がいらっしゃいます。

 

ビジネス・パートナーとの関係を構築する最初の段階から、我々弁護士は論争を避ける工夫をします。契約は論争の芽を摘み、論争がおきた際の解決方向を提示するものです。相手との問題が発生した場合に最初にすべきことは契約を読み返すことです。ただ時として両者の関係を規定した文書が無い場合もあります。またその後の両者の行動自体が契約関係を修正してしまうこともあります。したがって問題が発生した最初の段階で弁護士も絡めて事実把握を行うことは極めて重要なステップであり、これがその後の行動を規定するものになります。

 

契約上の権利と義務の十分な分析の後で、訴訟を開始すべきかどうかが判断されます。訴訟を開始する場合には勝訴の可能性とコスト、さらには相手がこれを防衛するためにどの程度のコストと時間をかける可能性があるかを分析しなければなりません。

 

訴えられた場合には、敗訴の可能性とコストを分析する必要があります。勝つ可能性が高い場合でも、そのための弁護士費用が和解金額より高くなるのであれば、ビジネスとして和解の判断を下す場合もあります。商業訴訟の和解はビジネス判断であり、感情的な判断であってはなりません。

 

訴える場合も訴えられる場合も、自分のケースの強みと弱みを理解することは極めて重要です。時として初期の段階で必要な行動を取らなかったが故により大きな損失を被る場合もあります。たとえば時効による権利の喪失などがこれに該当します。

 

さて、係争問題の解決は高くつくものでしょうか?次回は米国内、及び国際商取引におけるより安い代替的解決方法についてご紹介したいと思います。


(ブログランキング参加中:よろしければ下のアイコンをクリックしてください)


人気ブログランキングへ


(この記事は週刊NY生活3/21号に掲載されました)

All rights reserved.


Law Firm Directory - Law Firm Directory and Attorney Search



投稿者:
Hiro Sugano
 | カテゴリ:  |   | コメント(0)  | トラックバック(0)